「中身の見える大学から技術発信を目指す」vol.10 大越正弘(地域創造支援センター/地域連携・産学官連携)
公開日:2017.9.29
今年度記念すべき第1回は、平成29年4月から地域創造支援センターへ着任された大越正弘教授です。
これまでの経歴や研究を始めるきっかけ、大学で行っている研究を多くの人に知ってもらうための工夫、趣味のことまで様々なお話を伺ってきました。
************************************************************

■ 与えられた環境でのトライ

Q 大学で研究を始めるきっかけになったのは何でしょうか?
A もともとファジー制御について研究する等、福島県職員の機械系研究職として、仕事をしてきました。その後、研究職一筋の道と行政職へ変更する道を選ぶ機会があり、行政職の道を進むことになりました。福島県職員の行政職としては、再生可能エネルギーや医療機器関係の数々のプロジェクトやコンソーシアムの立上げに携わるようになりました。
 今回、大学で働くお話をいただいたので、前職での経験を活かし、大学、自治体、企業とのマッチングをはじめとする産官民学連携活動を積極的に推進していこうと思っています。
 それから、大学で働くというチャンスを活かし、医療機器産業に関する研究をやってみようと思っています。

Q 研究職から行政職へ移られた際、どのようにモチベーションを維持されたのでしょうか?
A 好きな言葉に「凡を極めて非凡に至る」があります。何か興味・関心があることに焦点をあてて深堀りしていくことが大事と思っているので、行政職へ移った際も、そこでしか得られないものを得るという考えで、仕事をしてきました。結果として、研究職と行政職の両方を経験したことで、視野が広がり、自分にとって大変大きな経験となりました。

■ 大学・産業界・行政の見えない壁をなくしたい

Q 先生が福島大学でやりたいこと、または今後の目標はありますか?
A 現在、大学では産学官連携に力を入れています。大学の研究で開発された技術を基に産業界と連携し、製品へと実現させてマーケット展開をするのです。
 福島県の医療機器産業は全国でもトップレベルですが、医療分野の国内産業はすでに飽和状態にあるといわれています。このまま国内のみで産業を行うには限界があるので、世界的マーケットを視野に入れるべきだと考えています。そのために、大学・産業界・行政機関の垣根を乗り越えて技術開発を行うプロジェクトを立ち上げたいです。今までも、単一企業や個別市町村との共同研究のような小規模プロジェクトの立ち上げ実績はありますが、複数企業あるいは複数大学から成り立つ大規模プロジェクトとなると実現するのは難しいです。ただ、そのような大規模プロジェクトなら世界を意識して研究・開発を行うことも可能ですし、そういったビジネスモデルの構築化も研究のひとつとして行っていきたいです。
 また、福島大学の先生方はどんな研究を行っているのか、福島大学の特徴は何なのか、と大学の中身について聞かれることがあります。本学に関わりのないような方でも、研究者の顔や研究内容が見えるような環境作り、研究で開発した技術を県内企業や県民にもっと知ってもらえるようアピールしたいと思っています。

Q 福島大学の先生方の研究をもっとアピールしたいとのことですが、現時点での具体的なプランはありますか?
A 研究成果報告会やセミナーでの発表はもちろんですが、今後は展示会に積極的に参加したいと思っています。展示会の準備は大変ですが、研究の成果を直接アピールできる良い機会なので、先生方にも積極的に出展していただこうとお声がけしています。
 例えば、今年10月に行われる医療機器展示会「メディカルクリエーションふくしま」に出展予定ですし、11月には再生可能エネルギー産業フェア「REIFふくしま」で展示ブースを設けて先生の研究成果を発信する予定です。また、本学ではロボット研究に携わっている先生もいらっしゃるので、同じく11月に開催される「ロボットフェスタふくしま」にも参加したいですね。


【参考 イベント案内】
◇メディカルクリエーションふくしま https://fmdipa.jp/mcf/
◇REIFふくしま http://reif-fukushima.jp/
◇ロボットフェスタふくしま
 https://www.robotfesta-fukushima.jp/



■ 田んぼ作りはイノシシとの格闘

Q 先生のご趣味は何でしょうか?
A 登山です。2,000m級の山に登るのが好きなので、南会津地方の山にはよく登ります。7月初旬くらいまでは残雪がありますが、そういうところを登るのは気持ちいいですよ。
 他には、県職員時代から、環境保全の一環として農業をやっています。1.2ヘクタールくらいの水田を作っていますが、イノシシが走り回って稲を倒してしまうんです。農家は対策に困っているのですが、震災以降、野生動物を食べることができなくなったため、捕獲する人がいなくなり、イノシシが増える一方です。野生動物と人間の共存が重要なテーマになっていますね。保護すればいいというものでもなく、一定数を維持していかないと、人間に害を与える存在になってしまいます。
 対策として電線を張ったりしていますが、イノシシは毎年増えるので、本質的な解決にはならないですよね。稲が倒れると、稲刈りにならないし、長雨が続くと芽が出てしまうんです。また、倒れた稲を刈ると米に石が混ざります。芋も掘り返して食べてしまうし、農家にとってイノシシは大敵なんです。捕獲するわけにもいかないので、追い払う戦術を立てています。具体的には、夜間小さい太陽光パネルに電気を当てて近寄らないようにするとか、ビニールテープを田んぼの四隅に張るとか。電線は効果的ですが、費用がかかります。


Q 有刺鉄線はどうですか?
A 設置と撤去に手間がかかりますね。草を刈らないといけないので、邪魔になります。

Q ネコ避けみたいなものは?番犬を飼うとか?
A 設置も撤去も楽でローコストな対策を探しています(笑)
 (以下盛り上がりました)








■ これだけは言いたい!

 今は資金0円で起業できる時代です。しかし、そういったベンチャー企業が10年後も事業展開できている確率は10%とかなり低いです。この確率を20%、30%と持ち上げていきたいですし、今後、学生ベンチャー企業のような大学発のベンチャー企業も積極的に興していきたいと考えていますので、いかに生き残る企業を多くするか、私の使命の1つだと思って取り組んでいきたいです。


大越先生のこれまでの研究実績はこちら https://search.adb.fukushima-u.ac.jp/Profiles/1/0000049/profile.html

************************************************************

海外では20代で起業している方が多くいるそうです。Facebook創業者マーク・ザッカーバーグもその1人です。何事にも興味をもって取り組んで福島大学から多くの情報や研究技術を発信していきたいですね!
「収穫した野菜で作った漬け物が美味しいんですよ」と笑顔で話してくださった大越先生。今年は雨天続きでしたが、お米は順調に成長し例年通り収穫できるそうです。新米が楽しみですね!